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「やぁ、山都くん。君がいつまでもやって来ないから、彼女の首をへし折って君に送りつけてやろうと思ったけれど、やめにするよ」
「真朱は無事なのか?」
「無事だよ。しょせん、彼女は君を釣り上げるための駒だ。あとはどうでもいい。君と、その力を纏う君と出会えた。それだけで人質の価値はなくなるんだ」
だって、普通にやっても正体をあかしたりしないよねぇと蛇目は言う。
「屋敷の連中を襲ったのは、俺を本気にさせるためか」
「そうだよぉ。なかなかの演出だったよねぇ、サボテンみたいになってさぁ。それでもしがみついてくるもんだからうっとうしかった。引き剥がすのに蛇を五十匹は使ったと思うなぁ。まぁ、そのせいで真朱ちゃんは寝込んじゃってるけどねぇ。さすがにショックだったみたいだ」
「…………」
「ん? どうしたのかな。この子のことを傷つけられたのが……」
「蛇目、まだ、間に合う、だから」
山都の言葉に蛇目は重ねるように言った。
「もう話すことなんてないよねぇ。私は私の意志で人を襲ったんだからぁ」
雨合羽の袖から溢れ出した、大量の蛇を地面に放ち、一気に襲わせる。身動きを封じたところでトドメを刺す。
山都はそれを飛び上がることで回避したが、蛇目はそれを知っていた。高い身体能力と爆発的なパワータイプ。山都大聖の性格を映し出したような、バカ正直な力だ。
蛇目は着ていた雨合羽を脱ぎ捨て、両腕に広がる蛇の鱗から半分ほど、蛇を出し、両腕を後方にグッと後ろにそらすと、彼女は思いっきり腕を振り抜いた。
両腕にトドメいた蛇達が弾丸となって山都大聖を襲う。
「あはぁ!! これは避けられないよねぇ!! 山都くん。着地しても地面は蛇の海だよぉーー!? どうするのかなぁ!!」
「ぶん殴る」
たった一言だけだった。空中に飛び上がった山都は片手に隠し持っていた石を使い、それを足場に加速、迫り来る蛇の弾丸を拳で弾き飛ばしていく。
「………なっ、んて」
無茶をするんだと思ったときには、山都の拳が蛇目に迫っていたが、ニィと彼女は笑う。
「殴れないよねぇ、山都くん」
拳がぶつかる寸前で止まっていた。
「本当に君は変わらないよねぇ、山都くん、君は敵に容赦ないけど、一度、味方だと思うととことん無力だ」
両手から蛇を溢れさせ。
「昔っから大嫌いだったんだよぉ!! この自己犠牲野郎!!」
思いっきり彼の腹部に突き刺した。
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