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どうしてこんなことになったんだろう。降りしきるにうたれながら彼女は呟いた。目の前には大好きな人がいる。赤色の衣に身を包み、金色の髪をした少年が睨みつけている。
『蛇目? 蛇目日傘(ジャモク、ヒガサ)?』
あまり好きじゃなかった名前、亡くなった祖父がつけたおかしな名前。
『なんだそれ、めっちゃかっこいいじゃん、
蛇目かー、うんいいな!!』
何がいいのかわからず、困惑する、彼女に遠慮なしに彼は手を取ると、
『遊ぼうぜ。蛇目!! なにする? サッカーか? ドッチボールか? かくれんぼ、んー、鬼ごっこか?』
そのとき彼女は何と答えたか覚えていない。うろ覚えだった。ただ、今、言えることは彼と彼女は敵同士になっている。
「蛇目。まだ、間に合う。だから」
「答えることなんてなにもないよぉ……山都くん。私は、私の意志で人を襲ったんだからぁ」
だから、その関係を切り裂いてしまおう。彼女は、蛇目日傘は自分の髪を振り乱した。数百匹の蛇達が一斉に牙をむき、瞳を向ける。名前と同じくらいに、全身を覆う蛇の鱗をさらけ出し、蛇目日傘は蛇を放つ。どうしてこんなことになったんだろう? 彼女は何度も繰り返し問いかけていた。
蛇目日傘と山都大聖が敵対すること数日前、季節は梅雨に入りジメジメとした嫌な天気が続いていた。やむことのない雨にテレビの天気予報では、雨量がどうたらこうたらと垂れ流していく。
梅雨、季節の変わり目ともなれば体調を崩しやすいし時期でもある。
「くししゅんっ」
とポニーテール少女こと、真朱は布団に寝そべりながらくしゃみをした。脇に挟んだ体温計がピピピと音を鳴らす。真朱は体温計の数値を見て、あーっと呻いた。
「貸してみろ」
金髪の少年が返事を待たずに体温計を取った。
「こりゃ、完璧、風邪だな」
「あう、やっぱりですか。すいません、山都様」
私のふがいないばかりにと言うが、風邪を引いてしまったのは仕方ないことだ。数日前から辛そうにしていた真朱に気づかない山都が悪い。
「気にするな。お前は余計なこと考えずに寝てればいい。雨がやんだら病院に行こうな」
ペタリと額に熱冷ましシートを貼り付けながら、寝てろと彼女を布団に寝かしつけた。
「はい、でも、山都様まで風邪を引いたりしたりしたら悪いです。それに蛇を探しているんでしょう?」
「だから、お前は気にするな。蛇だってすぐに見つける」
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