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それは、とても綺麗な形をした小箱だった。
僕は雑貨屋巡りを趣味にしており様々な店を回っているのだが、こういうところは本当に掘り出し物というのがよく見つかる。
今回見つけたこの小箱は特に逸品だ。綺麗に整えられた長方形の形、素材は桐だろうか。触れてみるととても表面はすべすべしている。
よほどの腕の立つ人が作ったのだろう、とても素晴らしい出来で芸術品と言ってもいいだろう。値も思ったほど高くはない。
「おや?お客さん、それを買うのかい?」
突然、店の主人らしき男が近付いてくると僕に話しかけてきた。温厚そうな顔でゆっくりと歩いてきた老人に僕ははい、と答え、
「何しろこれだけの物は日本各地探してもそうそう見つかりませんし。あ、お金もありますし」
「本当にいいのかい?」
え?と僕は声をあげる。老人は先程と雰囲気は変わらないが、口調が心配そうなものになっている。まるで、”その箱は危険だ”と言わんばかりに。
「た、確かに誰が作ったか分からないし、どういう代物か分かりません。でも、気に入ったものは買わなきゃ気が済まないんです」
「そうかいそうかい……。そう言うなら仕方ないね。……ただし、これだけは警告しとく、ふたを開けない方がいい」
「ふた、ですか?」
そうだ、と老人は返すと、
「その箱には何か得体の知れんものが入っとる。わしも知り合いからもらったときから中身は見ておらんが、中身だけは開けるなってその者にも言われたからなぁ」
「は、はぁ……、分かりました、気を付けますね」
僕は曖昧な返事を返すと、代金を払いその箱を手に入れた。ついにこの箱が僕のものになる、その高揚感と老人の言葉からくる不安の2つを抱き、店を出た。
しばらくしてふと、誰の作品だろうと思った僕は箱の裏を見た。そこには名前が彫られておりこう書かれていた。
【藤佐(ふじすけ)】と
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