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次の日、ネットで藤佐なる人の事を調べてみた。やはりこれだけの箱を作った人はどんな人物か、気になったからだ。
すると彼は家具職人であった。既に数十年前に亡くなっていたがその作品は名品と呼ばれる代物ばかりだった。
「すごい……、こんな人の作品を買えたなんて。しかしどういう作品があるんだろうか?」
すると出てきたのは旧家で使われた箪笥やら小物入れやら長持ちやら色々なものが出てきた。残念ながらこういう物の価値は僕には分からないが、素人目から見てもその出来映えの良さは分かった。
「確かにすごいけど……、小箱なんて見当たらないぞ?これだけの完成度なのに、それのついての記録が一切残ってない……」
数十年前とはいっても何かしらの形で記録は残っていると思っていた。しかしその記録の痕跡すらどこを探しても無かったのだ。
偽物か、そう考え始めた僕の中にある友人の顔が思い浮かんだ。その男は骨董に凝っており何度か藤佐の話をしたことがあったのだ。
早速電話を掛けてみる、すると気だるい声が聞こえてきた。
『おう、どうしたんだ?いきなり』
「見てもらいたいものがある、藤佐なんだが」
『ほほう、お前から藤佐の名が出るとは珍しい。よし、今からそちらに向かうから待ってろ』
少し興奮気味の友人は電話を切った。ふぅと僕はため息をつくと小箱を見る。
やはりいつ見ても美しい。そう感じ、ふと違和感を感じた。この箱は整っている、”気持ち悪いぐらいに”。あまりに整いすぎて何故か不気味な感じがするのだ。
ふと、老人がふたを開けるなと言っていたのを思い出す。あれは何故なのだろう、何かとんでもないものが入っているのだろうか。
好奇心と恐怖がない混ぜになる。ふたを開けたくなる衝動を何とか抑えると僕はさらに藤佐について調べ始めた。
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