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雰囲気が重くなる。整った形こそが最も美しい、とはどういう事なのか、僕は恐る恐る友人に聞いた。
「それって、芸術家として当たり前の事じゃないのか……?美しいものを作るために作品を作るのが彼らだろう……?」
「まあそうなんだがな。……彼の場合は、その意識が異常に強く、気味が悪いほどだったそうだ」
その言葉に僕は息を呑んだ。こんな小箱の為に全てを失ったなどと聞いて、衝撃を受けないわけがない。この小さな箱に、果たして何が宿っているのか、そして中身は何なのか。
友人は小箱を片目で見つつ、話を続ける。
「元々藤佐は形が整った物が真に美しいものと考えていたらしい。どうやら子供の頃からちょっとした箱のようなものは作っていたらしくてな、そこから家具職人になったというのもあるが」
「それならいいことじゃないのか?昔から芸術家としてのセンスがあったんだろうし、それが彼の芸術家になるきっかけになったんだろ?」
「それぐらいならまだ良かったんだけどな」
ため息まじりに彼は言った。僕は?を浮かべたが、彼は続ける。
「彼のその美意識は”完璧なまでに整った形を追及”という形なんだ。どのような物にも完璧な形を求め、それができないと良い作品でも容赦なく叩き壊した」
「そ、それは……、確かに作品を突然壊すことがあるって記述はあったけど……」
「さらに彼は人の作品にも批判をするようになった。形が悪いとかずれているなど、挙げ句には歪んで見えると言って、新人を酷評、作品を壊そうとしたこともある」
僕は絶句した。今まで藤佐という人に抱いていたイメージは崩れ去り、代わりに歪んだ美意識を持つ、完璧に固執した男と変わった。
そして友人は箱を見ながら告げた。
「晩年、藤佐は完璧な”箱”を作るということに固執した。何個も作っては壊し、最後に完璧な物を作り上げ、そして息絶えたとされる。もしかしたらこの中身は藤佐の箱に対する執念が宿っているのかもしれないな……」
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