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友人が帰った後、僕は恐怖におののいていた。暗闇の中で座り込んで震えていた。
まさか偶然買った小箱に、そんな恐ろしい話があるとは知らなかった。老人が言っていた、”ふたを開けるな”とはこういう事だったのかもしれない。
歪んだ美を追及した男の執念や怨念、そんなものが溢れ出て相手を殺す。もしかしたら前の所有者はそれで死んでしまったのではないのか。そしてあの老人の手に渡ったのではないか。
「ぼ、僕はとんでもないものを買ってしまった……。これは、いわゆる、パンドラの箱とやらじゃないのか……!?」
改めて小箱を見ると、やはり美しい。しかしその整った形、綺麗な面、何もかもが”整いすぎている”。そしてふたの隙間からは何か漏れ出している、そんな風に僕には見えた。
(あ、ああ、どうしよう……!僕は自らの好奇心で死んでしまうんだ……!やはりあの箱なんて買わなきゃ良かったんだ……!)
もう箱を直視できない。しかしどうしても箱が視界に入ってきてしまう。その美しさが視界の隅に入り込んでくる。これはまさしく藤佐が箱に掛けた、呪いなのではないのか。
「と、とりあえずあの小箱を見えないところに……!見ないようにして押し入れに閉まって……」
僕は箱に目を背けながら、携帯の明かり頼りに何とか箱に近付いていく。あと数メートル。息が苦しい、胃が締め付けられ吐き気がしてきた。頭痛もしてくる。
「あと、少し……!」
僕が箱に手を掛けたその時、いきなり携帯が鳴った。
「うわぁ!何だ!?」
その音に驚いた僕は携帯を落としてしまった。さらに手を伸ばしていたため、箱を思いっきり前に飛ばしてしまう。
「あ、ああ……!ふたが!」
そして、ふたは開いてしまった。
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