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あれから数週間後。カフェに1人の男が座っていた。それは小箱を手に入れた男の友人であった。
「悪い!遅れた!」
そこにもう1人の男がやって来る。友人が顔をあげた先にいたのは、その箱を持っていた男、その人であった。
「ん、別に構わん。特に俺も忙しいわけではなかったからな」
「良かった……。いやさ、家を出る時こいつを忘れそうになって」
彼が取り出したのは紛れもなく、その小箱であったのだ。そして彼は迷うことなくふたを開けた。
そこには何もなかった。空だったのである。友人はほう、と声をあげると、
「中身は何も無しか。まあでもかなり綺麗に整えられてるな」
「だろ?やっぱりいい買い物だったんだよ、これ」
あの後、男は恐る恐る中を覗いた。しかし中には何もなく、空っぽの箱しかなかった。
「しかしほんと怖かったんだよな……。箱に何が入ってるか、ほんとに分からなかったんだから」
「悪い、俺が変なことを言わなきゃこうもならなかったんだ。俺の言葉でまさかお前がそこまで追い詰められるとは考えなかった」
「いいよ、別に。結局中身は空だったんだし、良い小箱だったって再認識できたしね」
男は箱を輝くような目で見る。すると友人が咳払いをすると、話し始めた。
「その箱だが、どうやら藤佐が奥さんに作ってあげた物だったらしい。記録だけだがその人は彼の幼馴染みでよく遊んでいたらしく、藤佐もよく箱を作ってあげてたそうだ」
「じゃあこれは、藤佐が個人的に作ったただの箱なのか?」
「そういう事になる。まあ奥さんも結婚して数年で病気で亡くなり、藤佐もそのショックか家をそのままにして友人宅を転々としていたらしい」
そうだったのか、と男は箱を見て呟く。友人はまあ、と言うと、
「前の所有者は恐らく藤佐の大事なものが入ってたと思ってたのかもな」
「なるほど、それなら開けるなと言いたくなるね。……でもさ?」
「何だ、まだあるのか?」
「それなら、彼が完成させた箱ってのはいったい何だったのだろう?これ以上の物ならとんでもないものだよね?」
すると友人はニヤリと笑うと言い放った。
「彼は死んでから数年後、箱に入った状態で見つかった。それは棺だったが、”正方形で、中には同じ形に収まった彼の遺体”が入ってたのだそうだ」
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