第1章 卯月

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二度目はそれからわずか十年後。 「かぐや姫」を迎えに行くためだった。 月姫(かぐや)は朔夜と同い年だったが、月姫のほうが故あって人間界に長くいた。 それでも月姫は少女のような無邪気さを持っていた。 そして三度目。 まさか二度も同じ人物を迎えに行くために人間界を訪れることになるとは考えもしなかっただろう。 「…さて。」 月姫を探そうにも全く手がかりがない。 あるのは櫛だけ。 白玉の井戸の脇に落ちていた櫛。 昔、朔夜が月姫に贈ったものだ。 白玉の井戸の脇にあった、ということは間違いなく月姫はこっちにいる。 あの井戸は天界から人間界へとつながっている。 ただし、人間界から天界へ上がることはできない。 あくまで一方通行だ。 「ゆっくりもしていられないな。“気配”を探ってみるか。」
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