上司の妻×部下

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SideA ★★★★★ 貴女の哀しんだ涙を見て、不謹慎ながらも僕は思わず見とれてしまった その涙が哀しくても美しすぎて、釘付けになってしまった 僕は貴女を好きになってしまった いや……初めて会った時からずっと好きだった 会社の上司の奥さん 上司は僕を気にかけてくれて、可愛がってくれて、よく家にも遊びに行かせてもらっていた その度に上司と貴女に気づかれないように、貴女を目で追いかけていた 料理をしている貴女 洗い物をしている貴女 花の水やりをしている貴女 上司と笑って話している貴女 叶うはずのない恋なのに…… あなたを見ると、ドキドキしていた 突然の悲報 上司が交通事故で亡くなった 信じられないと共に貴女の事が心配で仕方がなかった 葬儀で気丈に振る舞っていた貴女 葬儀のあとで声を掛けようとした僕 ひとり涙を流していた貴女 どのくらい見とれていただろう 僕は結局、声を掛けることができなかった 僕ができる事といえば、上司の月命日に線香をあげに行くことだけ ……貴女に会える口実 その日には上司との会社でのことや家を訪ねた時の楽しかったことなどを話して、笑顔の貴女が見れた 貴女の涙が忘れられなくても、僕の日常は変わらない 貴女の日常はどのくらい変わっただろうか 上司の一周忌に同僚と貴女の家を訪ねた 笑顔を見せてくれたけれど、どこかまだ哀しげ 貴女の心はまだ癒えてないね 癒えるはずないね 上司と貴女が笑って話していた顔を思い出す 僕は月に一度、貴女の家を訪ねては線香をあげ、話をするだけの事を3年続けた そんなある日、いつもの様に貴女の家へ行き、他愛のない話をして貴女の家を後にした でもその日は自分の気持ちを押さえることができず、貴女の家へまた引き返した 貴女が玄関から出てきたと同時に、腕を引き寄せ、思わず抱き締めていた 「貴女が好きです」 「貴女の支えになりたい」 「貴女の本当の笑顔が見たい」 「貴女の心の傷を癒したい」 「貴女とずっと一緒にいたい」 年下の僕は頼りないかも知れないけれど、貴女の隣に僕をずっと居させてください
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