第1章

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「えー?俺の妹」   彗はいつもの笑顔で 私にコーヒーを渡してくれる。 だけど、その笑顔が怖くてたまらない。 「葵っていうんだ。可愛いだろ?」   笑顔のまま、彗はコーヒー啜ってる。 私も黙ってコーヒーを飲んだ。 でも、心臓はこれでもかってくらい、 早く鼓動を刻んでいる。 「もうさ、可愛くて可愛くて、 ほんと、目の中入れても痛くないんじゃないか、 ってくらいだったよ。 葵もお兄ちゃん、お兄ちゃんって慕ってくれて」 「……そう、なんだ」 「でも、中学あがって変わった。 やっぱりいつも通りにこにこ笑ってるんだけど、 どこか無理してるんだ。 ……あいつ、いじめられてたんだ」   心臓の鼓動が一気に加速する。 一瞬、険しい顔をした彗だったけど、 また笑顔で私の顔を見た。 「どうした?顔色悪いみたいだけど?」 「……なんでもない」
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