第1章

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「知ってるよね?東雲葵」 「でも、彗は……佐藤……」 「ああ。 あのあといろいろあってね? 東雲の姓は名乗れなくなって、 ばあちゃんの姓を名乗ってる」 「いろいろ……?」 「そっかー。 実希はあのあと、 すぐに引っ越しちゃったから知らないんだ」   にこにこ、にこにこ。 なんで彗はこんなに楽しそうなの? 「母さんは葵をいじめてた奴、 殺そうとして捕まった。 おかしくなってて、もう病院から出てこないよ。 父さんは母さんのことで 会社にいられなくなって辞めたんだけど、 現実から逃げるのに酒におぼれて、 躯壊して死んだ」 「…………」   躯が、震える。 彗に対する恐怖だけじゃない。 自分が犯した、罪の重さに。
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