第1章

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地下鉄セントラル・ラインでオックスフォード・サーカスから約20分西へ行ったところにあるウエスト・アクトンという駅が最寄り駅だった。 小さな駅で、 外に出るとインド人が経営するニュース・エージェントが2軒、 酒屋が一軒、 日系の不動産屋が一軒、 クリーニング屋が1軒、 それに「あたりや」という名の日本食料品店と薬局位しかなかった。     を出て右方向に歩いていくと、 すぐプリンセス・ガーデンと呼ばれる住宅エリアに入る。 このエリアに建っている住宅は全て、 チューダー王朝スタイルと呼ばれるイギリス伝統の建築様式で、 白い壁に黒い格子の入った、 日本でもお馴染みの英国風建物であった。 市内では北部のゴルダース・グリーン地区(ユダヤ人が多く住むエリア。 休日ともなると黒い帽子に黒い服を着たユダヤ人が大勢教会へ向かう姿をよく目撃した)とここウエスト・アクトン地区しか見られない貴重なものらしく、 その中の何軒かを不動産屋の案内で見て回ったが、 どれも古くて、 似たように思われたので、 深く考えることなく、 その中の1つに決めてしまった。 (子供の通学の関係で住居エリアは初めから限定されている。
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