第1章

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家も決まり、 ベーカー・ストリートの仮住まいからウエスト・アクトンに引っ越してしまうと、 途端に時間を持て余し気味となった。 賑やかなベーカー・ストリートの仮住まいにいたときは気づかなかったが、 静かな住宅街であるウエスト・アクトンに引っ越してからは、 異国の地で一人で生活するということが何とも味気ないものであることを夜になると痛切に感じるようになった。  独り身の寂しさを紛らわす意味もあって、 とにかく何かをしようと思い立ち、 自分の下手な英語力を少しでもアップさせるべく、 語学学校に通うことに決めた。 7月のある週末、 ノーザン・ラインのゴルダーズ・グリーン駅近くにある英語学校の門をたたいた。 今更、 大人数の教室も何なので、 家庭教師を頼むことにした。 まずはレベル・チェックの筆記テストを受ける。 結果はinter-mediate(中級レベル)であった。 この結果は、 既に英語圏の海外駐在を経験している者からしてみれば、 かなり憂慮すべきことだった。 思うに英会話力の出来不出来は、 その人の性格が明るく、 社交的で話し好きか、 あるいは寡黙かといった要素でだいぶ違ってくるようである。 寡黙な性格の人は、 日本語であれ、
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