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初めて彼に会ったのは、最終面接の時だった。
緊張が緊張を呼び、もう駄目だと始まる前から悲愴感を漂わせる僕に、冷たい視線を向ける人はあれど。優しい声を掛けてくれる人なんて、居る筈も無い。
まあ、当然だとは思う。
何しろここを勝ち抜けば、晴れて入社出来る最終面接だ。そこまで大手の出版社ではないにしても、全国区でそこそこ名の知れた情報誌を作っている会社だ。当たり前に、競争率は高い。
そんなピリピリを通り越して、張り詰めた独特の空気の中。
僕一人だけが、オロオロと浮きまくった挙句自滅の道を進んでいた。
周囲の人間がみんな完璧に見える。僕だけが、間違えて呼ばれたのだと本気でそう思っていた。だが、なんと言っても最終面接なのだ。
ここまで漕ぎ着けたのなら、何としても受かって就職先を決めたかった。ガクガクと震える足で、ギクシャク前に進む。トイレに行くのですら、この有り様だ。面接なんて、出来るのだろうか。
僕は、完全に自信を失い(と言ってももとより自信なんて殆ど持ち合わせてはいないが)、漸く辿り着いたトイレで項垂れていた。
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