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真也は父と二人暮らしで、それ以外は普通の男子高校生だった。
彼はクラスメイトの堤歌織と仲良くなった。
小中と一緒だったがクラスが別々。高校でもクラスメイトで留まっていた。
窓の外を見つめる虚ろな瞳が気になった。
話をし、気持ちは接近していく。恋仲になるまでに時間はかからなかった。
そしてデートの日、事件が起きた。
交通事故により、歌織が入院した。
付き添って病院へと向かった。しかし、待てども歌織の両親が現れず、疑心暗鬼に囚われる。
歌織の家へと行くが、意外な事実を知る。
両親と、長女である歩野歌と、次女の歌織という四人家族。歩野歌は優秀で、比較され続けた歌織は卑屈になった。
ある時、姉妹揃って交通事故に遭った。歌織はその事故で歩野歌が死んだと思い込む。歩野歌は事故で両足を失っていた。
母は歩野歌が両足を失ったショックで、歌織を視認できなくなっていた。家族を認識し、認識されているのは父だけ。
真也は歌織に人並みの生活をして欲しいと心から願った。
歩野歌が好きだった歌織。賛辞し、傾慕し、憧憬の念を抱いていた。
歌織は今でもまだ歩野歌のことを好いている。そう確信した真也によって少しずつ修復へと向かった。
父が奮起することでいい方向へと進むだろうと真也は思った。
家に帰った真也は不思議な気持ちになる。
『見たくないという思い込みで、本当に見えなくなってしまう』
その言葉が妙に引っかかった。
懐かしい甘い匂いに頭痛がしてくる。
そうかと、ようやく思い出す。
真也の母は死んでいなかった。DVにより、自分の視界から消してしまった。
自分に返って来きたのだと、茶の間のドアを開けた。また三人で歩いていけるかはわからない。しかし、元通りになればその限りではないと、胸を熱くするのだった。
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