第1章

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 真也は父と二人暮らしで、それ以外は普通の男子高校生だった。  彼はクラスメイトの堤歌織と仲良くなった。  小中と一緒だったがクラスが別々。高校でもクラスメイトで留まっていた。  窓の外を見つめる虚ろな瞳が気になった。  話をし、気持ちは接近していく。恋仲になるまでに時間はかからなかった。  そしてデートの日、事件が起きた。  交通事故により、歌織が入院した。  付き添って病院へと向かった。しかし、待てども歌織の両親が現れず、疑心暗鬼に囚われる。  歌織の家へと行くが、意外な事実を知る。  両親と、長女である歩野歌と、次女の歌織という四人家族。歩野歌は優秀で、比較され続けた歌織は卑屈になった。  ある時、姉妹揃って交通事故に遭った。歌織はその事故で歩野歌が死んだと思い込む。歩野歌は事故で両足を失っていた。  母は歩野歌が両足を失ったショックで、歌織を視認できなくなっていた。家族を認識し、認識されているのは父だけ。  真也は歌織に人並みの生活をして欲しいと心から願った。  歩野歌が好きだった歌織。賛辞し、傾慕し、憧憬の念を抱いていた。  歌織は今でもまだ歩野歌のことを好いている。そう確信した真也によって少しずつ修復へと向かった。  父が奮起することでいい方向へと進むだろうと真也は思った。  家に帰った真也は不思議な気持ちになる。 『見たくないという思い込みで、本当に見えなくなってしまう』  その言葉が妙に引っかかった。  懐かしい甘い匂いに頭痛がしてくる。  そうかと、ようやく思い出す。  真也の母は死んでいなかった。DVにより、自分の視界から消してしまった。  自分に返って来きたのだと、茶の間のドアを開けた。また三人で歩いていけるかはわからない。しかし、元通りになればその限りではないと、胸を熱くするのだった。
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