夏空

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夏空

 俺は占いというものに興味がなかった。手相、星座、血液型、その他いろいろ。とにかく占いというものは胡散臭いもので、そんな怪しいものの為に行動を左右されるのは実に馬鹿らしい。  勿論、信じてる奴は信じてるで構わないし占い師が詐欺師だと言うつもりもない。それで救われる人がいるなら結構なことだ。世間で占いが流行ってるということはそれだけ需要があるということだろう。  とはいえ。どんだけ流行ろうが需要があろうが、俺はそんなオカルトを信じるつもりはなかった。    『今日のおうし座の運勢は十二位! 今日は今年一番のアンラッキーデー、何をやっても失敗してしまう予感。外出やイベントへの参加はできるだけ避けて。トラブルにも巻き込まれやすいのでとにかく、今日一日はいろんなことに注意して過ごしましょう! ラ ッキーアイテムはねこじゃらしです! それじゃぁ今日も頑張って!』    この占いの結果、財布を落とし、何度も何もないところですっころび、自転車のチェーンが急に外れて、挙句自転車がパンクして朝学校に遅刻したとしても、俺は断じて占いを信じるつもりはない。なんだ、ラッキーアイテムがねこじゃらしって。持ってる奴が 限定的すぎるだろ。  とにかく、俺は例え、今後、どれだけ不運なことが起きても占いなんて信じるつもりはない。           =  夏場特有の生ぬるい風が身体をなぞっていく。普段だったらまだ日も落ち始めの頃だというのに辺りは薄暗く、空いっぱいに幅を利かせる厚く鉛色の空と時折、遠くに低く響く雷音が人々に夕立の襲来を予感させていた。  海沿いにあるというだけの大きくもなく小さくもないどこにでもあるような街。それほど、観光で栄えているわけでもなく、多少なり古臭い風景が残るもののコンビニもあればファミレスもある。都会とは言えないけど田舎でもない。生活に不便はないけれど、 かといって華のあるわけでもない。そんな本当にどこにでもあるような平凡な街。  そんな街にある小さな高校の小さなグラウンドでは、それぞれの部活が数少ない部員で活動を行っていた。 「雨降り出しそうだな」
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