第1章

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 口を開く度に出る白い息が、二人の間を往復する。 「堤の家はどこにあるんだ?」 「私の家は駅の向こう側よ。ここから十分くらいかな。片瀬君は?」 「俺は駅のこっち側なんだ。商店街の端っこでさ、五分もあれば帰れる距離さ。家から学校が近いから選んだようなもんだしね」  真也の発言に「私もなんだ」と相づちを打つ。二人は今同じことを考えた。もっと早くに出会っていれば、もっと多くを語れたに違いないと。  知っているだけの関係から進展した二人は、分かれ道に着くまでしゃべり続けた。しかし小学校からの会話を消化するには、途方もない時間が必要だろう。こんな短い時間では足りなくなるほどの、そんな時間が必要なのだ。 「じゃあまた明日な、堤」 「うん、また明日」  商店街を抜けて、駅のロータリーが二人の分岐点。真也は別れを告げて背を向ける。まだ話を続けたいけど、後ろを振り返る勇気もない。だから今はただ歩くことしか出来なかった。 「情けねぇ……」  そう呟きながら、明日を待ちこがれる自分がいることに、真也はまだ気付かない。  ロータリーからしばらく歩けばもう家は目の前だ。
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