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そんなネタまみれの勧誘を受けまくっていたわけだけど、中にはいわゆるキャバクラの勧誘もあった。
「キャバクラに興味ない?」
「ないない」
といいながら、毎度スルーしていたわけだけど。
キャバクラに勧誘されるたびに、あのカオスラウンジのことが頭によぎる。
「おねえさん、キャバクラに興味ない?」
「ないない」
「……やっぱ、名刺だけちょうだい」
と言って、スカウトの名刺だけもらってみた。
スカウトの名刺を家で見てるとまた思い出すのは織姫。
無駄に覚えた、一気コールの数々。
延々と歌い続けた、“ロンリーチャップリン”と“酒と泪と男と女”。
トイレに入ればすぐに吐けるようになったし、ミカン箱はお尻が痛かった。
そんな過去も、時間が経てば良い思い出として脳内で再生される。
美化というのは怖いもので、時間が経てばたつほど、良いもののように思えてくる。
酒とタバコと香水の匂いにまみれた店内も懐かしい。
名刺を眺めていると懐かしくなって、ふと、夜の繁華街に足を運んでみた。
久しぶりの夜の街。
ワタクシの目の前に広がるのは下品にきらめくネオンと大量の人。人。人。
雑音という騒音がそこら中から聞こえてくる。
……ものすごく気持ちが高揚した。
「ワタクシ、またここで働いてみようかな」
「でも今度は織姫じゃなくて、もっと面白そうなところで」
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