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同伴当日――
「今日は同伴ありがとう」
「じゃ、さっそく行こうか。すぐ近くだから」
そう言われ、待ち合わせ場所(店)から歩くこと10分。
勤める店と同じ繁華街内の、あるビルの前でお客さんが足を止める。
一見した感じ、夜の街にはどこにでもある、たくさんのスナックやバーの入った雑居ビルだった。
「ここだよ」
慣れた様子でビルの階段を登るお客さん。
いつでも逃げられるよう、後ろをついていくワタクシ。
3階まで上ると、茶色くも重厚感ある扉の前でお客さんはニヤつきはじめた。
「……もしかして、同伴先ってここ?」
重厚なドアの横に貼られてある、店名が記載されたプレートを見て後ずさるワタクシ。
「うんっ」
と、飛び切りの笑顔のお客さん。
その背後から異様なほどのプレッシャーとオーラを放つ、店名プレート。
“SMショーパブ 縛”
「……」
ワタクシ、無言で回れ右。
しかしそれをお客さんは許さなかった。
「さー!いこう!」
ワタクシは手をわっしと掴まれ、嬉しそうなお客さんにズンズン店内に連れて行かれた。
まだ見ぬ、新しい世界がそこに広がっていた。
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