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中央駅から、列車で、
故郷の地方都市エルームへと戻った。
アルヴに比べれば、
随分小さいがこの周辺では大きな都市だった。
この地に帰るのは、一ヶ月半ぶりだった。
列車が駅に着く。
荷物を担いで、駅に降りた。
荷物は、やけに重く感じる。
気が重いせいかもしれない。
両親や親戚、近所の人達にどんな顔をして、
会えばいいかわからなかった。
皆、盛大に送り出してくれた。
誇らしげな両親の顔を思い浮かべると、辛かった。
あの頃、国家の中枢を担うと息巻いていた。
転落は、あまりにも速かった。
今までの、全ての努力は、無に帰した。
人知れず、勉強も頑張っていた。
だから、王立アカデミーに入学できた。
なのに……
とりあえず、駅は出た。
ただ、中々、足は家に向かわない。
駅の近くの公園の植え込みの陰に腰を下ろした。
気分とは裏腹に、空は快晴だった。
やがて、日は落ち、辺りは暗くなっていく。
魔法で灯されている街灯が等間隔に並んでいる。
家へと近づく度、益々、憂鬱になる。
懐かしいとも言えない。
帰って来るには、あまりにも早過ぎる。
空を見ると、煌々と満月が輝いている。
醜態を照らし出して、嘲笑っているように思えた。
家の前に立っても、入る決心がつかない。
鍵を開け、家に入る。
中に、両親を見つける。
両親は、驚いたような顔をした。
「お、おかえり」
困ったような表情を浮かべ、
それだけを言う両親。
無言のまま、自室へと足を向けた。
両親は何も言わなかった。
気を遣っているのだろう。
「ちょっと、何してるのよ!
あんた、いいかげんにしろよ!!」
姉のコリーだけが、ドアの前で怒鳴る。
外に出るのが、億劫になっていた。
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