入学

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ここは、王立アカデミー。 全寮制のエリート養成校である。 一年につき、 国中から選りすぐられた百名のみ入学が許可される。 周囲は、塀で囲われ、その敷地は、広い。 端から端まで歩くと、およそ一時間掛かる。 授業料は、無料で、生活費も格安。 安易に外出ができない分、 ショッピング施設、娯楽施設まで、 なんでも揃う。 至れり尽くせりだ。 将来は、政治家、司法官、軍幹部、 国家魔術師、国家魔術研究員、 技術研究員等、 国の中心的な役割を担うことを 嘱望されている。 ああ、俺は、エリート。 浮かれずにはいられない。 上級生達が出迎えてくれ、 迷わないように、道を指し示している。 胸が高鳴る。 今は、希望しかない。 明るい未来しか見えなかった。 受付を済ませると、在校生によって、 寮へと案内された。 案内したのは、眼鏡を掛け、 真面目を絵に描いたような男だった。 正直な印象として、取っ付きにくそうである。 一年次のみ、二人部屋で、 次の年からは、一人部屋となるらしい。 淡々とした説明の後、 「わかったか」と、わかって当然とばかりに言う。 なんで、俺がこんなことをしなければならないのかと 言う声が聞こえてきそうな調子である。 「はい」とだけ答えると、 鼻を一つ鳴らし、去っていった。 何はともあれ、気を取り直し、 ここからスタートだとばかりに、 部屋のドアを勢いよく開けた。 「うわぁ」 驚く声が耳に飛び込んできた。 部屋には既に、人の姿があった。
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