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「びっくりさせないでよ」
荷物を整理していたであろう手を止めて、
むくれた顔を向けている。
一見すると、少女に見えた。
だが、ここは、男子寮だから、
そんなはずはない。
俺より、二歳程年下だろうか。
思わず見惚れてしまう程に、
綺麗な顔立ちだった。
「君がルームメイト?
入らないの?
僕は、クラレンス・エンジェル。
これからよろしく」
俺は、ドアを開けてそのままの態勢で、
突っ立っていたのだった。
「あ、ああ、よろしく。
俺は、アレクシス・アーリス」
「そう」
そいつは、短くそれだけ言うと、
再び、荷物を片付け始める。
他に言うことも見つからなかったので、
黙って部屋に入った。
俺の荷物も既に届けられ、
ベッドの横に置かれていた。
片付け終わったのを見計らい、声を掛けた。
「なあ、少し外に出てみないか?」
「今日は、寮から出ないように言われているでしょ」
ぴしゃりと窘められた。
「そう言わずに。
必要最低限とは言われたけど、
絶対だめとは言われてないからな」
「屁理屈だよ」
「なあ、少しくらいいいだろ?
暇だろ?」
「暇なら、予習でもしていたら?」
正論だとわかってはいるが、イライラする。
俺は、ベッドにどさっと、座った。
なんだよ、と小声で呟きながら。
「早く、荷物、片付けてよ。鬱陶しいから」
何だか、癪に障る。
「はいはい」
と、適当に返事をして、ベッドに転がった。
クラレンスは、
それ以上、何も言ってこなかった。
しばらくして、
俺は、渋々、荷物の片付けを始めたのだった。
クラレンスは、
俺がバタバタと片付けをしている間も、
ずっと、何かの分厚い本を読んでいた。
それから三時間もすると、
外は、薄暗くなっていた。
片付けを終え、
再び、ベッドに横になったのがいけなかった。
すっかり寝てしまっていた。
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