【4】 好敵手 

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「柊山先生の教室に籍を置ける人だ、性別は関係ないとわかっていたが、つい、失礼なことを言った。許して欲しい」 いえ。いつものことですから。 口には出さず、目礼で慎の詫びを受け入れた。 幸宏はといえば、楽しくなるねえ、とはっきりわかる顔をしていた。 学生個人の経歴は、本人から語られなければ彼女の耳に届くことはない。 だから、あえて慎にも、幸宏にも聞かなかった。 彼らも問わないから、彼女も過去は話さなかった。 目指すのは大学に居続けられるポジション。 意味するところは、未来の博士様、教授様だ。 肩書きが欲しくないと言えば嘘になる。高みを目指すと宣言して、柊山の門下に入った。 最高以外認めないと柊山も言った。 敵は少なければ少ないほどよい。摩擦は多いと消耗する。 が、幸宏も、そして後に加わった慎も、彼女の知的好奇心をいたく刺激した。 そして慎と幸子が加わったことにより、柊山の研究室内での順位も変わった。 No.1は変わらず幸宏。 No.1に限りなく近いポジションは慎が占めた。 少し遅れてその次に幸子。 福留は三人に遠く及ばない位置まで降りていた。柊山の自称助手という地位だけが彼を支えていた。 順位がはっきりした頃からだった、表立って、または目立たないように幸子がいじめを受けるようになったのは。 ――ばかばかしい。
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