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オレンジ色に染まった空が、段々色を失って、薄紫に彩りを変える頃。
あの人は、コンビニのドアを開ける。
名前も知らない、大学生くらいのお客様。
「いらっしゃいませー」
店内に響くその声が、いつもよりワントーン高く聞こえるのは、きっと気のせいじゃない。
アタシも、少し遅れて、それに続いた。
極力いつもと同じテンションで。
キレイに色を落とした髪の色が店内を明るく染める。
スラッとしていて、均整の取れた体格。
つってもいない、たれてもいない、バランスのいい目の形。
高すぎず、低すぎず、目立たない鼻筋に。
笑顔に見えるような形の唇。
金の髪は、くしゅっとした天然のもの。
羨ましいくらいに柔らかい。
…何か、ムカツク。
そんなことを思っているのはアタシだけで。
店内にいる女の子は、お客様も店員も、彼に釘づけだ。
夕方からバイトに入っているこの中にも、時間が合えば、買い物するふりをして、彼のことを見に来る人がいるくらいだ。
そこまでしたら、さすがにマズくないって、アタシは思ってる。
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