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良さが全然分からないけど、彼の人気はお客様という枠にしておけないくらいに高い。
「由佳ぁ、来たよ、あのお兄さん」
うっとりした声でアタシに話かけてくるのは、よくシフトが一緒になる美帆。
アタシが知る限り、一番彼に心酔している。
「タイミングがあえば、美帆にレジ譲るよ」
彼のレジ打ちはかなりの激戦になるらしく。
混んでなければ、レジを譲るアタシは、夕方からのバイトに限っては喜ばれる。
レジの相手をしたくらいで、何が変わるのか分からないし。
彼に対して、全く興味のないアタシからすれば、争ってまでレジを打ちたい気持ちが、全然分からない。
一生懸命レジ打ちしたって、お客様からすれば、よくいるバイトの女の子くらいの認識を持ってもらえるくらいじゃないかなって思うんだけど。
こういうときに、好きな男の人に振り向いてほしいって思うときのバイタリティーは本当にすごくて、ほんの少しのチャンスでも、生かそうとする。
アタシはそういうのできないから、圧倒されてしまう。
好きな人がお客様だったら、お客様と従業員の壁が越えられなくて、気持ちを伝えられないままに終わってしまいそうだから。
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