オトモダチ

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「直生くん」 「…………」 「ねーえー」 「……………………」 「もう、こっち向いてよー!」 「うわっ、ビックリするじゃないですか!」  いきなり腕が体を通り抜けたら、さすがに心臓に悪い。芽衣子さんはご機嫌斜め。 「さっきからずっと参考書見てばっかり。テストなんてどうしてあるのかしら」  不機嫌そうな彼女は置いておいて、また一頁読み進めていく。 「それはちゃんと今までやってきたことを理解してるかどうかの確認をするためじゃ」  そこまで言うと、芽衣子さんは大きな溜め息をつき、腕を組みながらふわふわと漂い始めた。 「こっちはせっかく会える日なのに退屈よ。あーあ、早く終わらないかな」  そう言われて目線を窓へと向けた。空模様は生憎だが、そうでないと芽衣子さんは姿を現さない。あの美術室での対面の次の日から、山本は僕を怖がって避けるようになったし、クラスでも大人しくしている。  何かあったとしたら、どう考えてもこの人が山本に何かしたとしか……。 「どしたの? 私のことじっと見つめちゃって」 「僕の考えてることわかってますよね」 「まあね。見つめられてる理由がわかっちゃうって何かあれね、損よ」  そういうものなのか。
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