オトモダチ

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「……どうして芽衣子さんは僕にだけ話しかけてきたんですか」  ふと、初めて会ったときからの疑問を口にする。一瞬時が止まったかと思うくらいの静寂が訪れた。 「どうして、って言われても。ただあなたには私が見えると思ったから。それに、前からあなたのこと知ってたの」  サラサラと落ちてくる顔周りの髪を耳にかけ、少し恥ずかしそうに目を伏せるのが、とても綺麗で。この姿を絵に残しておきたいと思った。 「ふふ、私の噂にまったく反応しないから化けて出たの。それでもビクともしないから、もう気になっちゃって」  もしかしたら、僕は取り憑かれてたりするのだろうか。こんな無邪気な幽霊に。 「物好きですね」 「普通に私と話してるあなたも大概」  くすり、笑みが漏れる。  人と話すのはこんなにも楽しいものだったのか。知らなかった。絵を描くことが僕にとってのすべてで、どう思われようが構わなかった。  友達なんていなくても何とも思わなかった。でも、芽衣子さんは違う。  僕をただの〝直生〟として見てくれる。絵のことも、生い立ちも、何も聞かないで笑ってる。それがすごく新鮮だったんだ。
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