不気味な笑い声

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 あの日は確か、雨だった。  うるさい教室を離れると、雨音がしとしとと耳に心地がいい。これくらい静かな雨は好きだ。最近はゲリラ豪雨がひどくて、どうしようもない時もあるけど。 「おい、アイツに言ってみろよ」 「で、でも……っ」 「さっさとやれよ、使えねぇな」  後ろの方で汚い舌打ちがした。山本だ。振り返るまでもない。また僕にちょっかいを出したいらしい。 「あ、あの浦沢くん」  この人は確かクラスの、名前は忘れたが山本に顎で使われている男子だ。キョドキョドと僕を見上げ、その腕いっぱいに持った画材を申し訳なさそうに僕の方へ差し出す。 「ごめん、これ美術室まで運んでくれないかな……?」  曲がり角の奥で山本が笑っている。そういうことか。黙って画材を受け取った。僕がやれば、この人は犠牲にならないで済む。    こんなくだらないこと、僕一人が請け負えば何もなく済む。慣れてるから。
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