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「ごめんなさい、どなたですか?」
「はい?」
「いや、僕あなたのこと知りませんし。初対面ですよね」
「ち……ちょっと待ちなさいよ! そこは普通驚くとこでしょ!? 驚いて目を見開くとこでしょ!?」
「目は見開いてるから見えてるんですよ」
「その呆れ顔やめて! こっちが悲しくなるからやめて!」
何なんだこの人は。透けてるし、浮いてるーー物理的にも空気的にも。笑っていたと思ったら今度は泣き出した。嘘泣きなのはバレバレで、突っ込んで欲しそう。
いいや、スルーしよう。
「スルーはひどくない!? これでも私、この学校の怪談なんですからね!」
「何で僕の思考を読み取るんですか」
「読み取れちゃうのよ、幽霊だから。私の前では隠し事なんて出来ないわよ?」
ふふん、と得意気に人差し指を唇に当てウインクする彼女は、見慣れない制服を着ている。
黒に近い濃紺のセーラー服に、目を引く深紅のスカーフ。黒くて長い髪の毛。
同い年くらいにも見えるし、大人にも見える不思議な女の人だ。
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