不気味な笑い声

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◇ ◇ ◇ 「そろそろ出してやっか。アイツ今頃腹空かせてくたばってるかもなァ、フヒヒッ」  夜中の学校に、一人の男子学生が無断で侵入した。彼はいじめの主犯格だった。  しんとした暗闇のなかで、履き潰した上履きのゴムが鳴る。美術室の鍵を手で弄びながら。 「ん?」  目的地に着き、懐中電灯を向けてすぐに気づいた光景。閉めたはずのドアが、豪快に倒れている。  まさか、そんなヤワな作りじゃないはずだ。校舎だってそんなに古くないし、開けられるわけがない。まだアイツはいるのか。急いで中に入ると。 「ヒッ!?」  部屋には真冬かと思うくらいの冷気が立ち込めていた。一歩後ずさると、今度は後ろから物凄い音がして、慌てて振り返る。  さっきまで倒れていたドアが、まるで生きているかのように、ひとりでに元ある場所へと動いているのだ。  男子学生は失神寸前だった。追い討ちをかけるように、不気味な笑い声が頭の中に響いてくる。  フフ……フフフ…… 「な、何だってんだよ!」  ……ヅクナ  調子ヅクナ……ハナレロ  ノロウ……お前を、呪い殺す呪い殺す呪い殺す呪い殺す呪い殺す呪い殺す呪い殺す呪い殺す!  それは地獄の底から唸るような鬼の声だった。ついに彼は気を失った。  翌朝、教師が彼を発見したのだが、誰一人として彼の証言を信じる者はいなかったそうだ。
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