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私以上に何かを知っているような含みのある言い方が、どうしても引っかかる。
さっきも、そうだ。教えてくれなかった。
最近は教えてくれないことが増えた、ように思う。
「教えてない」とは言われてないから実際はわかんないけど…たぶん、色々と教えてくれてない。
理一とは子供の頃からずっと一緒で…
それこそ最初の出会いのシーンなんて記憶にないほど、赤ちゃんの頃からだ。
親同士が仲が良いから、一般的な幼馴染みというよりは兄弟とか家族とかの関係に近いかもしれない。
だから知らないことなんてないと思っていたのに、最近は桜木の方が理一のことをよく知っているように思う。
別に、いいんだけど…。
でもなんか、なんか……
モヤモヤする。
「ほどほどに、しとけよ」
「ほどほど…な」
詞を書き留めたメモ帳を制服の内ポケットに戻しながら、理一が意味ありげに桜木の言葉を繰り返した。
話が終わったところにまた、
「ところで桜木、やってあるよな?」
新たな謎の会話が始まる。
「ん? あぁ! やってないけど?」
「は? 当たるって言ってなかったか?」
「当たるよ~」
「で、やってないの?」
「うん、やってない」
今度は、なんの話…?
軽い調子になった分、深刻な話ではなさそうだけど…中身が全く見えてこない。先程から見えない会話のボールをひたすら追っている。
私の存在、そろそろ忘れてませんかね…?
気付いてもらいたくても、背の高い二人の視界に入るのも簡単ではない。
「おまえさ…」
「なに?」
「………」
「………」
今度は突然、会話が止み、二人して視線を合わせたまま押し黙る。
理一は無表情だ。答えを探している。
桜木は理一から出てくるものを楽しみに待っている、といったところだろうか。その顔には、ワクワクという擬音が一番合うかもしれない。
「……そういうことか!」
「ん~?」
「おまえ、今までももしかして…!!」
理一がハッと何かに気付いた。リアクションが火サス並みにオーバーだけど…
おそらく桜木はそれを待っていたはずなのに、わざとらしく、しれ~っと、なにが?と首を傾げる。
て、なに!?
その桜木の態度で、逆に理一は確信を持ったようだ。呆れ顔で、重くて深い溜息を吐く。
な…なに!?
「………」
「………」
そして、また静かになる。
なんか、嫌な感じが…
理一のアレがそろそろ出るかもしれない。
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