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「これってもう、完成してるの?」
「1番だけ、な」
「え? てことは、また同じぐらいのを絞り出すの? この意味わかんないのを…」
「絞り出すって…」
「でしょ?」
「そうだけど…」
「意味わかんないのに…」
「“意味わかんない”って…それはウタが、だろ? まぁでも曲があっての話だから、確かにこれじゃ平面で立体じゃない分、深さもないしな? まぁ、わかんないか…」
ん?
なんだか、その説明さえ…
「“その説明さえ、わかんない”んだろ? 穂積(ほづみ)」
反対側から、私と同じように覗き込んでいた理一の親友 桜木健人(さくらぎ けんと)に漏れてるはずもない心の声を継がれ、
「そう…わかんない」
呆然と、顔を上げる。
そこで、桜木の視線を真正面でしっかりと受け止めてしまって、
あっ…
慌てて逸らそうとしたけど、遅かった。
その濁りのない、澄んだ薄茶色の目に捕まってしまうと数秒は動けなくなる。
理一と同じぐらい長身で、でも、骨格が理一より一回り小さいせいか、スッキリスラリとして見え、また腰の位置も高い。
その体型を裏切らない小さな顔には、スッと通った鼻筋と薄い唇、そして、最も人の目を引く薄茶色の瞳が美しく配置されている。
ここまでくると、嫌味以外の何ものでもない。
でも、全く嫌味がない。
生まれながらの品の良さが、効いてるのだろうか?
それこそまさに嫌味だと思うけど、何もかもがうまい具合に調和がとれている。
窓から差し込む朝日に、元々茶色の柔らかそうな髪がより明るく見えて、余りにも一般人のカテゴリーから外れたその容姿に息をのむ。
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