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朝からうちの学園王子でいらっしゃる、桜木健人の無言のプレッシャーに捕まった。
本人に、そんな気はないんだろうけど…
完璧過ぎるその造形を目の前にすると、好きじゃなくても何とも思っていなくても、一様に魅せられる。
心ごと攫われ、動作、思考を奪われて、身体に緊張感だけを残す。
そして何よりこの薄茶色の目が困る。
この目に見つめられると、心を見透かされてそうで怖くなるのだ。
透明度の高さは美しさと冷たさを併せ持つ。だからこそ、そこに触れたいと、その向こうを知りたいと思う人もいるのかもしれないけど、私は怖くて近づけない。
そんな王子様が目の前で、フッと口元に黒い笑みを浮かべた。
今日もまた、良からぬことを思いついたのだろう。
美人とは切っても切れない残念な性格が垣間見えて、逆にホッとする。
「いつも見てるから、穂積の考えてることはわかるよ!」
明らかにボリュームとトーンを王子仕様に切り替えてきた。周りを意識して…
そして駄目押しの微笑みも一緒にプレゼントされる。私にとっては、迷惑な贈り物以外の何物でもない。出来れば受け取りたくはない。
朝からキラキラと面倒なほど眩しく、笑みを零す。
わかってて、やってる。ことは分かっている。
予想通り、盗み聞きしていた女子たちの「キャア」という黄色歓声が車内のそこかしこから上がった。
たぶん、“穂積”の部分は自分の苗字に脳内で変換されているのだろう。
しかしこの人は、一体、ナニになりたいんだろう。
ゴールを、ドコに設定しているのだろう?
その歓声に満足したのか、更に笑みが深くなる。
近しい人にはわかる、したり顔だ。
さっきの微笑みと砂を吐きそうなほど甘さたっぷりの台詞は、私に対して出したものじゃない。
見られていることをわかっての、あえての、だ。
サービス精神旺盛なのはいつものことなので、構わないデス。
けど…
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