秘密

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あれ…? 名前を出してくるなんて初めてかもしれない。 桜木は誰よりも自分の魅せ方を知っている。自分プロデュース能力は、もはや玄人だ。 だから自分を輝かせるために人をダシにすることはあっても、誰か一人にターゲットが絞られるような、素人まがいのやり方はしない。 「桜木、ウタを巻き込むなよ!!」 突如朝から無駄に始まった桜木の胸キュンばら撒きキャンペーンに私を出してきたことを、理一も気付いた。 「そんなに穂積が心配なら、アレやれよ?」 「ウタが心配なんじゃない。そうじゃなくて、どっちにしても、とばっちりを食らうだろ? それが嫌なんだよ。だいたい、そのやり方、脅迫だろ?」 「理一に選ばしてやってるだけだろ?」 「おまえ、ホント…」 言葉に詰まった理一に、 「ん? なに?」 悪びれた様子もなく、どうぞ、続けてみ?と王子様スマイルを返す桜木。 王子と使い勝手の良い参謀の図、というと理一に怒られるかもしれないけど… でも理一にとって桜木は、格上相手なことに違いない。王子はいつか王になるのだから、それはそっか… で、いったい、なんの話?? 「どういうこと?」 二人の顔を交互に見る。曖昧にしてる部分を教えて欲しいのに、 「穂積は“わかんない”ままでいいんだって話にオチたみたいだね。2曲目はアップテンポの曲だったよな? まぁそんな感じでアップテンポで巻いていこうよ!てことになった、今」 と、桜木にはぐらかされる。一方、理一はムッとした表情で口を閉ざしたままだ。 “なった”ではなく、した、んでしょうが! 理一が何も言わないってことは教えたくないってこと、だよね? じゃあそこはとりあえず、まぁ、いいとして…詞の方! サラッと見ただけで、わかった風な桜木の発言がちょっと気に入らない。別に、競ってるわけではないけど… 「二曲目はアップテンポなの?」 「まぁそうだけど…、なんで俺が……」 理一は律儀に答えてはくれたものの、さっきの謎の会話をまだまだ引きずっているようで軽く流された。 「仕方ないだろ? 守備範囲外なんだから。この話、二回目だよ? 理一、ホント諦め悪いね~」 「普通はな、反省して、その姿勢を改めてから頼むもんだろ? とりあえず、その無駄なばら撒きをどうにかしろよ! それをするから、だろうが!!」 「残念、これも俺の仕事のうち。“仕事”って言っても理一と違って、俺、無償。ボランティア」
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