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「今日は理一くん、来ないのね?」
母は、鋭い。
リビングのソファーで一人、ポツンと、見る気もないニュースを眺めている私に目ざとく、ピンポイントで突いてくる。
毎日ではないけど、夕食後にデザートと称してアイスを食べに通ってくる理一が来ないことと私の様子で、勘づいたようだ。
「昨日、食べちゃったのがバレてケンカになった?」
またここでも、食べ物ネタ、というよりはアイスネタ。
そんな程度のケンカしかしないと思われていることで救われたような…高校生なのにそれレベルと思われていることは、考えもののような…
「…そういうんじゃないよ」
「そうなの? 理一くんの大好きなアイス、ママ買ってきたんだけどな…。て言ってもね、3割引だったのよ!」
ママはキッチンで洗い物をしながら、すごいでしょ!? お手柄でしょ?と、自慢する。
我が家でママが一番、子供っぽくて、人生を楽しく生きていると思う。
「…珍しいね、安く売るなんて」
「でしょ? でしょ!? 嬉しくて、冷凍庫いっぱい買ってきたの! だからさ、持って行ってきたら?」
「え?」
「早く仲直り、しなさいな!」
「ママ…」
て、なんでいつも、キャパ考えないで安売り商品買ってくるんだろう…
わざわざ後片付けの手を止めて、冷凍庫からアイスを2つ取り出してスーパーの袋に入れる。
渡しても受け取らないと思ったのか、これ見よがしに、目の前のローテーブルに強引に置いて、
「これで、お肉が冷凍できるスペースができたわ」
上機嫌で、キッチンに引き返して行った。
行くしかない。
ところまで、追い込まれた。
モタモタしているとアイスが溶けてくる。もしかして、それも見越してのアイス・チョイスだった!?
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