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「おまえは、好きでやってんだろ?」
「おまえも、好きでやってるだろ?」
「…………」
「………ん?」
「おまえ、ホント、最悪」
「ハハッ! わかってくれて嬉しいよ! 俺、友達に恵まれて良かった~」
そう言って、ポンポンと、理一の頭を撫でた桜木の行動にまた歓声が上がる。
どういうジャンルの方が乗り合わせているのだろう….この電車。
それにしても桜木は一切隠す様子もなく、理一を脅している。むしろ、私に見せつけるように。理一は、嫌な顔をしながらも桜木の好きなようにさせている。
無償だの、ボランティアだの…
ここでその話を出してくるなんて、腹黒王子様の本領発揮だ。
でも、そこまでするって…
また、ナニカあった?
桜木は基本、友人としては害はない。
というよりは、デメリット面が相殺されるほどメリット面の方が多い。
しかし抱えているものが大きすぎて、ナンダカンダで面倒ごとに付き合わされる。
理一と戯れる桜木健人は私たちが通う私立百合ヶ丘学園の跡取り息子だ。
同じ高校2年生で、私と理一は1年からのクラスメイトでもある。
百合ヶ丘学園はマンモス校で、1学年8クラス総勢900人を超える。そんな中で2年連続、同じクラスになるなんて、クラス替えに神の手ならぬ、桜木の手が働いていることは言うまでも無い。
こんな感じですでに権力を持ってしまっている桜木が、将来、この学園の理事長の座に君臨することは確約されているわけで…
約束されている肩書きに、アイドルなんて霞むほどのこの容姿で、一歩、外に出れば文字通りワーキャー言われる毎日だ。
オーバーな話ではなく、桜木の後ろには列ができる。それでも嫌な顔をせず、むしろ、愛想を振り撒いて歩く。ホント、パレードを見ているようだ。
さっき理一が注意した“ばら撒き”とは、こういうところだと思うけど…
そこしか、わからない。
どう見ても、理一と桜木は真逆のタイプだ。
ー静と動。暗と明。黒と白。
それでもナゼか親友で、仲良く戯れている(ように見える)。
でも多大なる被害を受けるのは、基本、理一。
なんともバランスの悪い二人なのに、ナゼか意気投合して、そして今日も朝から仲良く登校していたりする。
「お前の力で法律変えてくれたら、俺はサクサク働けんだけど!?」
大きな身体なのに子供のように頭を撫で続けられる仕打ちに耐えられなくなったのか、理一が桜木を睨みつけた。
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