二章 LOVE広場の楽しみ方

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 翌日、朝から雨だった。  雨の日は好きじゃない。家を出る時も空が暗いからだ。  朝食も作ってもらえない。見送ってももらえない。それが寂しくないといえば、嘘になる。  けれど、そのことにはもう慣れてしまった。 どこで間違えたのか。それとも単なる必然なのか。それはよくわからない。 ただ、もう慣れてしまったんだ。  それでも、空が暗いのには慣れることはない。 俺が住む香川県は、日本で一番、晴天の多い県だ。  だからなんだろうか? 暗い空はどうしても気分が参ってしまう。  俺は駅へと向かう道すがら、傘の下で携帯を開いた。  グルに入る。当然、誰もいる様子はない。  『あいさつ』という、文字通り朝晩の挨拶を書き込むためだけの板に、おはよう、とだけ書きこんで、俺は携帯をポケットへと落とし込んだ。  雨は何事もなかったように、しとしとと振り続けている。  俺は無言で、雨が傘を叩く音を聞きながら、歩いていった。  昼休みに携帯を見ると、メッセージが届いていた。グルの主催者、ヒラからだった。 「どう? グルには慣れた?」  主催者らしい気づかいに感謝して、俺は返信する。 「おかげさまで。ありがとう。楽しんでるよ」 「そっか。よかった。メグと盛り上がったみたいだね」 「ああ。楽しかった」 「よかった。もし見かけたら、わたしや他の人とも絡んでね」 「ああ。もちろん」 「ありがとう! じゃあ、またグルでね!」  そんな話をしていると、昼休みはほとんど終わってしまった。  あっという間に時間が過ぎる。  それに驚きはしたものの、悪い気分ではなかった。
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