三章 募る想い

2/5
前へ
/41ページ
次へ
 完全に予想外のメグからのメールを、俺は改札をくぐってから開く。 「おはようございます。昨日は突然落ちちゃってごめんなさい」  礼儀正しい子だな。気を使うタイプなんだな。俺はそう思った。  もしかしたら、女の子なら別の見方をするのかもしれない。でも、俺はそう思った。 「気にしないで」  そう返した俺への返事は、五分くらい置いてから来た。すでに俺は電車の中だ。  東京のような満員電車ではないから、メールは充分見れる。 「ありがとう。そういえば、ヒラちゃんと仲いいんですね。知り合いなの?」 「いや、グルに誘われるまで知らなかったよ。そんな仲いいかな?」  ヒラは管理人だから、気を使ってるだけだと思う。けれど、その俺の想いはメグに否定される。 「仲いいよー。グルの雑談見てきたけど、すごく会話が弾んでたもん」 「確かに会話は楽しいね」  そこで、メールが途切れた。五分の感覚が、十分になる。  自覚のないまま俺は、何回も携帯を見ていた。  電車がホームに着く。改札を抜けてまた携帯を見ると、返事が来ていた。 「そっかあ。よかったね。気のあう人ができて」 「まあね。でもメグと話すのも楽しいよ」 「……え? 本当に?」 「うん。グルって初めてだけど皆楽しい、いい人ばかりだよね」  俺は無邪気にそんな事を書く。  それがメグにどういう印象を与えるのか、まったく考えもせずに。  現実にはありえないような、そんな返事。  少し考えればわかることを、俺は考えなかった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加