三章 募る想い

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 それからしばらくが過ぎた。  俺はNIOに入り、グルでみんなと雑談することをすっかり日常の一部にしていた。  土日、家族といる時間はもちろん入れなかったが、それ以外の自由な時間はほとんどをグルで過ごしていた。  色んな人と話すが、それでも一番盛り上がるのは、ヒラか、メグと話しているときだった。  楽しかった。  ただ話すことが、楽しい。  時間がたつのを忘れるほど、楽しい。  会話を終わらせるのが名残惜しいほど、楽しい。  変わらない日々の中で、思い出した気持ち。  それが、俺が忘れていたもう一つの気持ちを、表に出す。    ――いや、違うな。  明確に、もう持ってはいけないもの、としていた気持ちだ。  忘れていたんじゃない。  思い出さないように、していたんだ。  心の奥に、丁寧に鍵をかけて閉まっていた。  傷つけないように――  傷つかないように――――  その箱を開ける鍵は、やっぱり一通のメール。 「明後日から、イベントやります」  ヒラから全員に向けて発信された、グループ通信。  ――鍵は、差し込まれた。
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