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イベント告知という、初めてのグループ通信を受けた日の夜。
雑談板は大賑わいだった。
「こんばんは」
「ダイこんばんは。イベント参加するの?」
「いや、考え中。イベントって何するの?」
いきなり尋ねてきた仲間に、俺は正直に答えた。
そしてついでとばかりに、内容を尋ねる。
返ってきた答えは、『疑似カップル』イベントをする、というものだった。
俺にはどうにもピンとこないが、つまりは参加希望の男女の人数を揃え、グル主であるヒラが指名してペアをつくり、専用のカップル板を作る。
そこでお互いを最優先に絡むことで、親密になるというものらしい。
俺は一旦携帯を脇に置いて、少し考える。
――どうしたもんかな。
グループは暇つぶしに登録したものだ。
だから俺は恋愛グループと言われているここで、毎日雑談を楽しんでいる。
その延長線と考えれば、イベントを楽しむのも、いいだろう。
けれど、疑似とはいえ、バーチャルカップルになる、ってのは多少抵抗がある。
俺は思わずリビングから後ろを振り向いた。
そこは暗く電気が落ちていて、相変わらず起きてくる気配もない。
休日、一緒にいても付き合っていた頃のドキドキ感は、今はない。
それでも、この家には確かな安心感がある。
それを作ってくれているのは間違いなく、妻と子どもだ。
恋愛から家族愛に変わっても、大切な存在、ということには変わりはない。
疑似カップルは、裏切りにならないか。
それは、バーチャルに踏み込みすぎではないか。
悩みながら、再び携帯を手に取る。
一番上には、参加希望者、という板が出来ていた。
中を見ると、数人の名前がすでにあった。
もうほとんどカップル同然になっている二人もいたし――
――それから、メグもいた。
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