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「わたしは、ダイが好き」
ヒラの突然のメールに、俺は思わず胸を押さえた。
どくんどくん、と心臓は常になく早い鼓動を伝えてくる。
喉が、カラカラになる。乾きからくる不快さを消そうとして、口を開き、そこでようやく俺は、自分が呼吸を忘れていたことに気づいた。
「俺が?」
おうむ返しに問いかける。
ヒラはいつものように、早い返信をしてきた。
「うん。あたしは、ダイが好き。すごく好き。どうしようもないくらい好き」
堤防が決壊したように、言葉が溢れてくる。
「グルなんだから、誰かと絡むのが当たり前なのに、あたし以外の女の子と楽しそうにしていると、もやもやする。グル主で、自分で企画したのに、イベントを後悔してる。板を見ていると、嫉妬しちゃう」
ヒラの、ずっと溜め込んできた気持ち。それが、痛いほどに伝わってくる。
「もちろん、絡むな、なんて言えないし、言わない。でも、あたしを一番に見て欲しい。
あたしだけを、特別に大事に想って欲しい」
真っ直ぐなヒラの想いを受け止めて――俺は、自分が返す言葉を持っていないことに気づいた。
コイゴコロ。俺はいまやそれを自覚している。
ただ、俺は、誰に対してそれを持っているのか?
俺は自問する。そして自答できない。
だが、できないでは済まされない。
探さなければならない。
見つけなければならない。
俺の、向かう先を。その相手を。
「少し、時間をくれるか?」
俺はようやくそれだけを返した。
「うん。もちろん。突然ごめんね。ダイならそう言うと思った。そう言ってくれる、って思ってた」
ヒラからは頷きの、そしてよくわからない返事が来た。
「そういう、生真面目なところも、好き。おやすみなさい」
もう一度気持ちを伝えてくれて。それから俺に返事を許さない末尾で、ヒラのメールは終わっていた。
――ありがとう。
心の中でだけ呟いて、俺は携帯を閉じた。
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