終章 つながるコイゴコロ

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「えーと……ありがとう。でも、これ以上はここだと……」  歯切れの悪い、メグの返事。その意味を、俺はすぐに悟った。  どうにも突っ走ったことを俺は書いている。  それも、カップル板とはいえ、疑似カップルの。  つまりは、グルの誰でも見れる場所で。  俺たちが十分ほど沈黙した時、俺たちだけが書き込めるはずの場所に、俺たちではない書き込みがあった。 「まったく……あんたたちは」  それは、グルの主からだった。  グルの主で――俺に好きと言ってくれた女の子からだった。 「主として特別に認める。いいから二人で納得いくまで話してきな」  その女の子は、とてもとても、魅力的な女の子。  それでも、今は性別を感じさせないような口調で、書きこんでくれる。 「納得出来たら、またここに書き込みな」  本当は、とても嫌なはずなんだ。  自分が告白した男が、別の女の子と、きちんと向き合って話すなんて。  それでも、彼女はそれを感じさせないように、主として振る舞う。  その姿は、凜とした、いい女。  他に言い表しようもない。  こんないい女が、俺に告白してくれたなんて、夢じゃないかとさえ思う。  ――けれど、今俺が向き合わないといけないのは、メグだ。 「わかった。後で必ず書き込むからね、ヒラ」  先にメグが落ちた。  俺も、それを追うべく、最後の書き込みをしようとする。  ごめんな、と打って、一度それを消した。  ――謝罪は、許されない。謝って、どうなるっていうんだ?  それは俺を慰めるだけ。ただの自己満足だ。ヒラは、そんな事を望んでいない。 「ありがとう」  俺が打ち込んだ、最後の言葉に。 「いいよ、お礼なんて」  きっとたくさんの感情を込めた言葉が返ってきた。  それを、きちんと書き込めるヒラは――  やっぱり、俺なんかにはもったいないくらいのいい女。  心から、そう思う。  だから――ありがとう。
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