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「おめでとう、二人とも。グル管理人として、これほど嬉しいことはないよ。バーチャルで、でも真剣に恋愛してくれて、ありがとう。ずっとここで、仲良くして。これからもグルを盛り上げてね」
一瞬、呼吸が止まった。
ヒラは、どんな気持ちでこれを書いてくれたんだろう。
さっきのメグの表情はいくつか想像できたけれど、今のヒラの表情は、俺には想像できなかった。
あるいは、したくなかったのかもしれない。
食い入るように、書き込みをずっと見つめていると、メールが入る。
「本当におめでとう。板にも書いたけど、管理人冥利につきるよ」
差出人は、当然のように、ヒラ。
「女としては、やっぱりちょっと悔しいけどね」
祝福のメッセージの中に込められた、そんな冗談交じりの言葉。
「まあ、これからもグルを盛り上げてね。よろしく!」
どれが本音なのか。
わかる気はするけれど、ヒラが隠そうとしてくれているなら、それに甘えよう。
それが、凛と立とうとする人への、礼儀だ。
「ああ。色々ありがとう。これからもよろしくな」
そう打ってから、もう一人へとメールを打つ。
「改めてよろしく。ずっと仲良くしようね」
そうして、二通のメールがほぼ同時に返ってくる。
『こちらこそ、よろしくね』
文章は全く同じでも、意味は全く違う。
その違いは、向ける気持ちの違い。
それが鏡のように、二人の言葉から違う意味となって返ってくる。
それこそが、恋をしている、ってことなんだろうな。
俺は眼を閉じ、一人とだけ会話を続けようと、返事を打ち始めた。
その相手は、もちろん――――特別な存在になった人。
メグ。
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