一章 招待メール

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「何をするグループなんですか?」  まったくわかっていない、初心者丸出しのそのメールに、返事はすぐに来た。 「みんなでワイワイおしゃべりして、イベントとかを通じて仲良くなるグルです。気に入った女の子がいたら、恋愛しちゃってください。でも、リアルはダメです」  ……よくわからなかった。とりあえず、グループをグル、と略すらしいことはわかった。  俺が正直にそう返すと、やはり返信はすぐに来た。 「あはは。ダイさんは面白そうな人ですね。だいじょうぶ、あたしもいるし、みんないい人ばっかりだから。試しに参加してみて?」  いきなりずいぶん砕けた口調に変わっていたが、それが全然嫌じゃなかった。  むしろ、仲良くなれる気がした。  そして、少しばかり迷ってから。  ――まあ、暇つぶしにはいいか。  俺はそう自分を納得させて、決めた。 「不慣れですが、よろしくお願いします」 「ありがとう! まずは自己紹介してね。いっぱい楽しんで、恋して下さい」  嬉しそうな文字が躍る返信は、やっぱり速かった。  そうして俺は、グループ内の「自己紹介」とついた板に初めての書き込みをした。 「はじめまして。ダイといいます。三十歳。既婚です。みなさんよろしくお願いします」  素っ気ない自己紹介だとは思ったが、正直これが精一杯だった。  書き込みを確定させて、二十分くらいたってから、再び『LOVE広場』を見にいく。  すると最新の更新は、俺が書きこんだ『自己紹介』から『歓迎』に変わっていた。  その板を見てみると―― 「ダイ来たね! よろしく!」 「ダイはじめまして。よろしくお願いします」 「ダイおはつ」 「ダイいらはい。がっつり絡んでね」  ――無数の、俺に対しての書き込みがあった。 「みんなありがとう。これからよろしく」 それに対する俺の書き込みは、やっぱり素っ気なかったけれど。 みんなが俺を見てくれる、ってのがとても嬉しかった。
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