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「こんばんは。誰かいますかー?」
そう書きこんだのはメグ、という名前の女性だった。
上半身だけ見えるアバターのアイコンは可愛らしく、一瞬見惚れそうになる。
――落ち着け。アバターだから。本人じゃないから。
「いますよ」
素早いとは言えない手つきで、そう打ち込む。すると、すぐに返事がある。
「よかったー。ダイさんですか? はじめまして」
「はじめまして。不慣れですけど仲良くしてください」
「こちらこそヨロシクです。ダイさんはまだ寝ないんですか?」
「さっきまでここで絡んでいたら、眠たくなくなっちゃって」
「あ、わかりますそれ! 楽しいですもんね」
「そうなんですよ」
「じゃあじゃあ、眠くなるまでわたしとあそびましょー!」
とりとめのない会話が続く。メグはいかにも話し好きの女の子で、話題はくるくると変わった。当然、常にリードしているのは、メグのほうになる。
さっきまでみんなで話していたのが、ワイワイ楽しい、だったとすれば、今は話のテンションこそ変わらないが、受ける印象は暖かい、という感じだった。
ふと、独身だった頃を思い出す。お金がなくて、デートはファミレス。それでも、相手の子は飽きもせず喋ってくれた。
俺はほとんど聞いているだけだったけれど……楽しかったのを、思いだした。
気がつけば、時刻は深夜一時。さすがに寝ないとまずい。
俺は、最後の一文を打ち込んだ。
「そろそろ寝ないと。おやすみ」
メグの返事は、やっぱりすぐだった。
「今日はありがとう。楽しかったー。また話そうね。おやすみ」
それは社交辞令かもしれないけれど。
メグも楽しかったなら、嬉しい。
そんなことを思いながら、俺は携帯電話を閉じた。
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