二章 LOVE広場の楽しみ方

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「こんばんは。誰かいますかー?」  そう書きこんだのはメグ、という名前の女性だった。  上半身だけ見えるアバターのアイコンは可愛らしく、一瞬見惚れそうになる。  ――落ち着け。アバターだから。本人じゃないから。 「いますよ」  素早いとは言えない手つきで、そう打ち込む。すると、すぐに返事がある。 「よかったー。ダイさんですか? はじめまして」 「はじめまして。不慣れですけど仲良くしてください」 「こちらこそヨロシクです。ダイさんはまだ寝ないんですか?」 「さっきまでここで絡んでいたら、眠たくなくなっちゃって」 「あ、わかりますそれ! 楽しいですもんね」 「そうなんですよ」 「じゃあじゃあ、眠くなるまでわたしとあそびましょー!」  とりとめのない会話が続く。メグはいかにも話し好きの女の子で、話題はくるくると変わった。当然、常にリードしているのは、メグのほうになる。  さっきまでみんなで話していたのが、ワイワイ楽しい、だったとすれば、今は話のテンションこそ変わらないが、受ける印象は暖かい、という感じだった。  ふと、独身だった頃を思い出す。お金がなくて、デートはファミレス。それでも、相手の子は飽きもせず喋ってくれた。  俺はほとんど聞いているだけだったけれど……楽しかったのを、思いだした。   気がつけば、時刻は深夜一時。さすがに寝ないとまずい。  俺は、最後の一文を打ち込んだ。 「そろそろ寝ないと。おやすみ」  メグの返事は、やっぱりすぐだった。 「今日はありがとう。楽しかったー。また話そうね。おやすみ」  それは社交辞令かもしれないけれど。  メグも楽しかったなら、嬉しい。  そんなことを思いながら、俺は携帯電話を閉じた。
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