プロローグ

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点けっぱなしのテレビの音が一瞬にして聞こえなくなった。 頭の中には携帯に映し出されていた文字がただの形となって、頭の中をグルグル回ってる。 心臓だけは激しく脈打ち、他の体の一部は微動だにしようとしない。自分は今何をしていたんだろう。あぁ、そうだ。彼と連絡を取り合っていたんだ。 携帯を見ると画面が暗くなっていた。結構な間放心状態だったらしい。とりあえず返事をしないと。震える右手で画面をスライドさせゆっくりと簡潔に返事を送った。誰も周りにはいないくせに涙を堪え。  今日、私、この話では越野芙美(こしのふみ)と名乗っとこうは、彼氏に付き合って2ヶ月の記念日の日に振られた。  出会いは単純だ。私が働いていたバイト先に彼が入ってきた。 そして、たまたま同じ大学の一つ下だったので、分からないことを教えてあげていたら、彼から好意を寄せてきたのだ。 大事なことなので、もう一度言おう彼から好意を寄せてきたのだ。 何回か食事をして、映画を見て、そして、今日から丁度2ヶ月前に地元で有名な夜景が綺麗な公園で告白をされた。 それから順調にお付き合いというものを続けてきたはずだったのに…急に、本当に何の前振りもなく今に至る。 そう、本当になんの前振りもなかったのだ。私が鈍感だったとかでは決してない。 今から5時間前、2ヶ月の記念日だから大学の講義が終わって私たちは会っっていた。 いつもと変わらない会話をして、記念日だから手紙は渡して、野球の練習があるから頑張ってねと声をかけバイバイして… まさか、それから5時間後に振られるとは思ってもみなかった。 いや、その前にメールじゃなくて会ったときに言って欲しかったものだ。野球をしてていきなり別れようと思ったわけじゃないだろうから。 別れようとしている人に、旅行に行きたいねとか美味しいカツ丼屋さん見つけたから行こうねなんて手紙を渡してしまった、こちらのなんとも言えない恥ずかしさを考えて欲しい。
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