28人が本棚に入れています
本棚に追加
/438ページ
先ほど隆侍たちが入室したドアがガチャリと開いた。
そこには髪を整え、外行きの私服を身に纏った美里が立っていた。
頭の上とツーサイドアップに結った二つのゴムに着いている、計三つの赤いリボンの蝶結びが彼女の可愛さをより引き立てている。
「お、お待たせしました!」
ほんのり頬を紅潮させながら隆侍たちに歩み寄る美里。
そんな彼女に、行栖が相変わらずニヤニヤしながら告げる。
「お、随分と気合い入れたな」
「な!? 何言ってるの、お兄ちゃん!?」
図星だったのか、大きく体をビクつかせる美里。
そして両手を胸の前でわたわたと動かしながら、必死に弁明する。
「違いますからね、隆侍さん! い、いつもこういう格好してるんですよ! さっきはたまたまなんです!!」
言い終えた後に兄に近寄り、「も、もう変な嘘は良くないよお兄ちゃん!」と拳を何度も叩く美里。
隆侍は、別に気にする必要ないのになと思いつつ、この流れを終わらせる為に誘いの言葉を掛けることにした。
「美里ちゃんもゲーム、やるよね」
「……はい! もちろんです!」
美里は笑顔を隆侍に向けて頷いた。
………………。
まずは肩慣らしといった感じで、すごろくのような盤面をサイコロで進んで、アイテムを収集することで勝敗を決めるパーティーゲームを三人でプレイしていた。
「あの、隆侍さん」
隆侍の手番が終了し、行栖が操作するキャラクターにサイコロを振らせている時、隆侍と行栖の一歩後ろにいた美里が話しかけてきた。
「ん、何?」
「引っ越しのこと、聞かせて下さい。お兄ちゃん、何にも教えてくれなかったので」
真面目な表情で隆侍にお願いする美里。
けどそれは当然だよな、と隆侍は納得し、頭の中で整理を行った。
「ああ、勿論」
最初のコメントを投稿しよう!