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赤渕隆侍と赤渕愛守は、夕希原で生まれ夕希原で育ってきた。
しかし三年前、彼らの両親は事故に遭い、この世を去ってしまう。
事故の原因は不明。隆侍は二人と共に外出していたのだが、何故かいつの間にか離れた場所で息を切らして倒れていたのである。
両親を失った二人は、遠方の親戚の家に引き取られることとなった。
その間は行栖とは連絡を取っていたが、美里とは一切取っていなかった。
そして数週間前、愛守の転勤が偶然にも夕希原の隣町に決まった。
なので親戚を説得させ、隆侍も共に戻ってくることとなったのだ。
隆侍はこの話の後者部分を、美里に説明した。
「それでついさっき、新居に着いたってわけだ」
「なるほど……って、今日だったんですか!?」
説明を聞いて納得しかけていた美里が、隆侍の最後の単語に驚きの声を上げる。
画面を見ていた目を隆侍の方に向ける。
「もしかして、長距離移動で疲れてるのにお兄ちゃんが無理矢理連れてきたんじゃないですか? 無理しなくても、いいですよ?」
「そこは大丈夫。伊達に鍛えてないからな」
親戚の家に行ってからは、これから大変になる姉を支える為にと身体を鍛え始めた。
今ではすっかり習慣となった隆侍の身体は、随分とガッチリしている。
「確かに、すごい筋肉ですよね! お兄ちゃんよりずっと頼りになりそうです」
「イチャイチャしてないで美里、お前の番だぞ」
美里が隆侍の二の腕に触っていると、行栖がニヤニヤしながら画面に指差した。
指摘され、顔を一気に茹でダコに染め上げる美里。
「イ、イチャ───ッ!? イチャイチャなんてしてないよ!」
両手を何度も上下に動かして、否定をアピールする。
その反応を可愛いなと思いながら見つめる隆侍は、ここでようやく故郷に帰ってこれたと実感出来た気がしていた。
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