1st duel─再会と思い出のカード

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パーティーゲームの他にもレースゲームや格闘ゲーム等を一通り遊び終えた頃には、もうほとんど日が暮れた時間になっていた。 「そろそろ姉さんもお腹空かせるだろうし、帰るとするかな」 そう言って隆侍が立ち上がろうとした時、 「いやいや、別に帰らなくて平気だぜ?」 行栖が引き止めてきた。 まだ遊ぼうぜなら分かるが、帰らなくても平気とはどういうことなのか、隆侍は分からずに聞き返す。 「どういう意味だ?」 「後で分かる分かる。ほら、とりあえずコントローラー握れって」 「……」 説明を省かれ、隆侍は目線で威圧する。 ただでさえ鋭い目付きをしている隆侍がそれを行うと大半の人間がビビって悪くなくても謝罪をしてくるのだが、長い付き合いの行栖と美里にはまるで効果がない。 次に美里の方を見てみる隆侍だが、彼女は彼女で隆侍にお任せと笑顔で示してきた。 仕方ないからラスト一戦だけは付き合ってやろうかと考えた時だった。 「お邪魔しまーす」 玄関の方から声が聞こえてきた。 しかしその声は、隆侍が良く知っている。 「え、姉さん?」 確かに布団受け取り時間がとうに過ぎているし、その後の予定は特に決めていなかった。 もしかしたら自分が高並家にいるのを知っているから、共に外食へ行こうと迎えに来てくれたのか──と隆侍は考えたが、そこで先程の行栖の台詞を思い出す。 「行栖」 「おう。お前と愛守さんはウチで一緒に夕飯を食べることになってるぜ」 行栖は白い歯を出しながら、サムズアップを突き出す。 なるほど、こいつと姉さんが共謀してたわけか……と理解する。 しかしこれは別に自分にマイナスがあるわけでもないので、隆侍は一度だけ溜め息を吐くだけにした。 そのタイミングで、家に上がってきた愛守がゲーム部屋へと到着する。 「お、相変わらずやってるねー!」 「愛守さん、お久しぶりですっ」 入室してドアを閉じた愛守に美里が抱き着く。 それはさながら本物の姉妹のように見える。
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